2012年6月4日月曜日

『雀狂伝説銀ヤンマ』

『カイジ』や『アカギ』で知られる天才・福本伸行先生の短編集。

表題作は、『銀と金』にも重要人物として出てくる平井銀二が主人公。
警察に所属しながら、ヤクザの賭場に顔を出し、代打ちをする。
いつ描いたものかはよくわからないが、おそらく『近代麻雀』に載ったものであろう、かなりオーソドックスな麻雀漫画で、『天』に近い雰囲気。
まだ、今程心理描写や駆け引きを多く描いてはいない。
代打ちのテクニックも、山越しで差し馬の相手から出た牌で当たるとか、牌を河から拾ってすり替える「拾い」を河からではなく、相手の手牌から抜くとかその程度。
しかし、逆に今より空気をうまく描いている感じで、嫌いではない。

その他の作品は、人情ものの短編が多く、昭和の雰囲気を漂わせる。
出てくる主人公は皆、どんくさく世の中に小器用に適応できない人間ばかり。
福本伸行先生の作品が面白いのは、フィクションでありながらキレイごとではない身も蓋もない世の真理をついてくることだ。
『カイジ』に出てくる利根川や班長などの悪役が吐く言葉は、毒に満ちているが、実によく芯を食っている。
しかし、福本先生自身は、決して性悪説の支持者ではないように感じる。
それを表しているのが、どんくさく不器用な主人公達である。
彼らは、世の流れにうまくのれないかわりに、他者への真摯さ・誠実さを持っている。
それが、たまには正当に評価されてもいいじゃないか…
そんな福本先生の優しさと世間への反骨心を垣間みることが出来る。

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