2012年4月20日金曜日

『HUNTER×HUNTER』と『寄生獣』

『HUNTER×HUNTER』のキメラアント編と『寄生獣』
この2作品、ともにたまたま最近読んだのだが、よく似ている部分があって興味深い。
  

どちらも、人類と異種生命体の闘いがテーマ。

『寄生獣』は、人間の脳に寄生し、人間をのっとるパラサイト。
『HUNTER×HUNTER』は、他の生物を食べてその特徴を次世代に残す蟻、キメラアント。
どちらも人間を補食する、極めて残忍な種。
しかし、両作品とも、必ずしも敵を絶対悪としては描いていない。
むしろ、様々なシーンで人類の残酷さを印象づけている。
それが顕著に現れているのが、ボスの倒し方。


『寄生獣』で、主人公の新一が最強のパラサイト後藤を倒せたのは、山に大量に不法投棄されたゴミに含まれていた有毒物質のおかげ。
増え過ぎた人類を減らさなければならないといういわば地球の意思が生み出したパラサイトは、人類が生み出す毒によって倒された。

『HUNTER×HUNTER』で、王を殺したのは、結局ネテロ会長が奥の手として仕込んでいた小爆弾「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」による毒(明らかに核兵器による放射能のメタファー)
人類が生み出した最悪の兵器が、結局、人類を存続させる。

「人類は全く優しくない、残忍ゆえに最強なのだ」
両作品ともに、根底にそんな皮肉が流れている。
しかし、それを痛烈に批判!というわけでもない所が、バランスのよさだなと思う。
その真理から目を背けるな!くらいの感じだろうか。
そして、両作品ともその覚悟を見せるシーンを描いている。

『HUNTER×HUNTER』でいえば、ネテロ会長が王との対話を拒否するシーン。
会長は王の中に芽生え始めている、明らかに人類より優しく正しいかもしれない性質を感じ取り、同時に自分にキメラアント抹殺を依頼してきた人類の権力者たちの「醜悪さ」を思う。そして、感じる「やっかいだな」と。
それは、自分の闘いの正義がゆらぐことを感じ取ったからに他ならない。
だからこそ、ネテロ会長は対話を拒否し、人類の業を自分が一身に負う覚悟を決めた。
それが、「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」の使用。
人類の正義が勝つのではない、人類の悪が勝つのだと…

一方、『寄生獣』では、新一が最強のパラサイト後藤を倒した時、弱り切った後藤にトドメを刺さずに立ち去ろうとする。
『寄生獣』においては、新一がパラサイト達と闘ったのは人類のためではなかったからだ。
母や友人を殺され、あくまで個人的な感情と立場で闘っていたにすぎなかったし、同時に、人間の他の種への悪虐さに気づきいていたからだ。
しかし、立ち去りかけた新一は改めて思い直し、後藤にトドメを刺す。
新一自身はやはり人間であり、ならば人類の業を背負うべきではないかと覚悟を決めたからだ。

そして『寄生獣』は、さらにその先へ行く。
物語のラストで、主人公の新一が闘う相手は、パラサイトではなく人間の大量殺人犯。
「人間は異種殺しだけではなく、同種殺しをする生物」というテーマまで踏み込んだのだ。
しかし、迎える結末は、決して暗く絶望的なものではないし、非常によかった。

別に『HUNTER×HUNTER』が『寄生獣』をパクった!とか言いたい訳ではない。
しかし『寄生獣』という作品が、「人類vs異種生命体」ものという古くからあったジャンルに新しい解釈を与え、多くの作品のルーツになったことは確かだろう。
今も、このジャンルのマンガは多い。
『進撃の巨人』『GANTZ』『彼岸島』『アイアムアヒーロー』…
このあたりの作品が、どういう展開や結末を見せるのかは、非常に興味深いところである。


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