2012年4月17日火曜日

『HUNTER×HUNTER』19〜30巻

キメラアント編を一気読み。
これは面白かった、本当に。

『幽遊白書』も好きだし、『HUNTER×HUNTER』のここまでも面白かったが、キメラアント編は別格。

ゴン達が、王の宮殿に突入してからの、同時多発的に起こる闘い。
シーンを次々と変え、カットバックしながら描かれるスピーディーな展開は、まるで良質なアクション映画のよう。

面白いのは、キャラクター1人1人が、それぞれ違う立場、違うモチベーションで動いていること。
キメラアントの王を倒すという共通目的を持って突入したメンバー達でさえ、想いはそれぞれ違う。
ゴンは、「カイトを元に戻したい」
キルアは、「ゴンと一緒にいたい」
ネテロ会長は「しょうがないからオレが戦うしかない。たぶん、死ぬなあ
(でも強いヤツと戦うのちょっと嬉しい)」

キメラアント側の王護衛軍も、王の軍儀の相手コムギの取り扱いをめぐって考えも行動も違う。
そんな個々の思惑が、事態を次々と変化させていく。
こういうのを「キャラが生き生きと動いている」というのだろうか。
初期の『HUNTER×HUNTER』の感想で、「記号化のうまさ」と書いたのだが、そのデジタルな演出のうまさから一歩先へ進んだ感がある。
相変わらず記号化はうまいが、その記号に生命を与える能力を得たというか…

単純な善悪二元論を超越する、少年漫画としては異色で革命的な作品になったと思う。

そして、最も革命的なことは、ラスボスである王を倒すのが主人公のゴンではないということだろう。

王がネテロ会長の爆破から、ユピーとプフを食って復活したとき、誰もがこの強くなった王にゴンが挑むことになるのだろうと思ったはず。(なにせドラゴンボールのフリーザみたいなんだもん、王。)
しかし、そうはならなかった…

迎えるのは、意外な結末。
ラスト、王がコムギの膝で眠るシーンは、まあ泣いた…
今、思い出すだけでも、涙が出る。

でもよく考えると、ゴンが王を倒さないのは当たり前だっただ。
ゴンはカイトを元に戻したかった」だけ。
そのために、実は王は関係ない。

そう考えれば、結構みんな自分の想いを全うしていることにきづく。

■ ユピーとプフは王の栄養となることで、最高の至福を得た。
■ ネテロ会長は、人類の全ての業を背負い、自分の命と引き換えに王を殺した。
■ その他のハンター達も、自分の職務は全うした。
■ 王は自分の名前を「メルエム」と知り、コムギと軍儀を打ちながら死ねた。
■ ゴンは、カイトを元に戻せなかったが、カイトを追い込んだ張本人ピトーを倒したし、
実は女王蟻が最後にカイトを生んでいたからよし。
■キルアだけは、ゴンとずっと一緒にいられず、後悔している。

ということは、これから描かれる物語は、キルアの物語であろう。
そもそも、主人公のゴンはあまり読者が感情移入できるキャラクターではない。
ちょっと迷いがなさすぎるし、まぶしすぎるのだ。
その光に憧れながら、自分の影をとのギャップに怯えていたキルアの目線の方が、読者に近い。

キルアがゴンへの愛情の中に感じている妙な後ろめたさを解消したとき、この物語は終わるかもしれない。

それにしても…
休載が多いのはどうやねん!?と思っていたが、休載してこれだけクオリティがあがるなら、それも正しいのかもしれない…。
週刊連載で、今の漫画に求められるクオリティを維持するには、相当厳しいのだろうし、冨樫先生がそのはるかに上を目指しているのだということは、この作品を読んでよくわかったしね。
正直、これまでは「サボってんだ」と思ってたけど…。




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